まず結論は?
SSDは「速さ」よりも、用途に合った「耐久性(TBW)」と「NANDの種類」で選ぶのが失敗しにくい方法です。 書き込みの多い業務や長期間の利用には、1つの記憶セルに3ビットを記録するTLCで、TBW(保証される総書き込み量)が大きい製品が向きます。読み出し中心で容量を重視するなら、4ビットを記録するQLCも候補になります。DRAMキャッシュを持たない製品は、HMB(パソコンのメモリを借りる仕組み)で補うものがあります。中古SSDは、残りの寿命を数字で確かめてから使います。
TLCとQLCは何が違う?
SSDはNANDフラッシュというチップにデータを記録します。KIOXIA(キオクシア、日本のNANDメーカー)の解説によると、1つの記憶セルに記録するビット数で次のように呼び分けます。
| 呼び方 | 1セルあたり | 区別する電圧の段階 |
|---|---|---|
| SLC | 1ビット | 2段階 |
| MLC | 2ビット | 4段階 |
| TLC | 3ビット | 8段階 |
| QLC | 4ビット | 16段階 |
KIOXIAは、ビット数が増えるほど容量とコストの面で有利になる一方、電圧を細かく制御する必要があるため、書き込み・読み出しが遅くなり、寿命も短くなると説明しています。性能や寿命を重視する用途はビット数の少ない方式、容量やコストを重視する用途は多い方式が向く、という整理です。
注意したいのは、同じ製品名でも容量によってNANDの種類が違うことがある点です。 例えばWD Blue SN5000のデータシートには「TLC」と「QLC」の両方が書かれています。当サイトの型番マスターでは、1TBモデルはTLC、4TBモデルはQLCとしています。容量ごとの仕様を確認してください。
DRAMキャッシュとHMBは何?
SSDの中には、データの置き場所を管理する表などを一時的に置く**DRAM(作業用の高速メモリ)**を持つ製品と、持たない製品があります。
- DRAMあり: Samsung 990 PRO 2TBは2GBのLPDDR4を搭載しています。
- DRAMなし(HMB): Samsung 990 EVO Plusはキャッシュを「HMB(Host Memory Buffer)」としています。HMBは、パソコン本体のメインメモリの一部をSSDが借りて使う仕組みです。
DRAMの有無は仕様表の「キャッシュ」「DRAM」の欄で確認できます。HMBを使う製品は、パソコン側がHMBに対応していることが前提です。どちらが用途に合うかは、同じ条件で測ったレビューやベンチマークで確かめてください。
耐久性(TBW・DWPD)はどう読む?
- TBW(Total Bytes Written): 保証期間内に書き込める総量です。Samsung 990 PRO 2TBは1,200TBW、WD Blue SN5000 1TBは600TBW、Crucial P3 Plus 1TBは220TBWです。同じ1TB前後でも数倍の差があります。
- DWPD(Drive Writes Per Day): 保証期間中、毎日「容量の何倍」を書き込めるかで、データセンター向けSSDでよく使われます。
2つは次の式でつながります。
TBW = 容量(TB)× DWPD × 365日 × 保証年数
例えばSamsung PM9A3 3.84TBは5年保証で7,008TBWです。3.84×1×365×5=7,008なので、1DWPDにあたります。
多くのメーカーは保証を「期間またはTBW到達の早いほう」としています(Samsung 990 EVO Plusのデータシートなど)。書き込みの多い使い方では、年数より先にTBWに達することがあります。
接続規格と形はどう選ぶ?
| 規格 | 例 | 注意点 |
|---|---|---|
| PCIe 5.0(M.2) | Crucial T705 2TB(読み出し最大14,500MB/s) | 対応スロットがないとPCIe 4.0の速度で動く。発熱が大きい |
| PCIe 4.0(M.2) | Samsung 990 PRO、KIOXIA EXCERIA PLUS G3 | 現在の主流 |
| U.2(2.5インチ) | Samsung PM9A3、Solidigm D7-P5520 | データセンター向け。一般のマザーボードには差し込み口がない |
M.2は「2280」(幅22mm・長さ80mm)などの長さの表記も確認します。
いまの相場は?(セミコンチャートのデータ)
中古SSDは何を確かめる?
- 書き込み量を読む。 S.M.A.R.T.(SSDが自分の状態を記録する仕組み)の総書き込み量を専用ソフトで読み、TBWの何%を使ったかを計算します。
- 保証の条件を見る。 メーカー保証は期間かTBWの早いほうで終わります。中古では販売店の保証で判断します。
- データ消去の記録を確かめる。 前の持ち主のデータが確実に消されているかを確認します。
FAQ
Q1. QLCのSSDは避けたほうがいい? 用途によります。KIOXIAの説明どおり、QLCは容量とコストに優れる一方、速度と寿命で不利です。読み出し中心の保存用なら候補になり、書き込みの多い用途ならTLCが向きます。
Q2. DRAMなしのSSDは遅い? HMBでパソコンのメモリを借りて補う製品があります。用途での差は、同じ条件で測ったレビューやベンチマークで確かめてください。
Q3. TBWを超えたらすぐ壊れる? すぐ壊れるとは限りませんが、メーカー保証の対象外になります。業務用では、TBWに近づいたら交換を計画してください。
Q4. PCIe 5.0のSSDを4.0のパソコンで使える? 多くの場合は使えますが、速度はPCIe 4.0の上限になります。マザーボードの対応を確認してください。
Q5. 容量の違うSSDの値段はどう比べる? 上の表の「1GBあたり」の価格で比べると、容量が違っても比べやすくなります。
出典
- KIOXIA「多値化技術」 https://www.kioxia.com/ja-jp/rd/technology/multi-level-cell.html
- Samsung「990 PRO with Heatsink データシート Rev.3.0」 https://download.semiconductor.samsung.com/resources/data-sheet/samsung_nvme_ssd_990_pro_with_heatsink_datasheet_rev.3.0.pdf
- Samsung「990 EVO Plus データシート Rev.1.0」 https://download.semiconductor.samsung.com/resources/data-sheet/samsung_nvme_ssd_990_evo_plus_datasheet_rev.1.0.pdf
- Samsung「PM9A3 Data Sheet Rev.1.0」 https://download.semiconductor.samsung.com/resources/data-sheet/Samsung_SSD_PM9A3_Data_Sheet_Rev1.0.pdf
- Sandisk(Western Digital)「WD Blue SN5000 NVMe SSD データシート」 https://documents.sandisk.com/content/dam/asset-library/en_us/assets/public/western-digital/product/internal-drives/wd-blue-nvme-ssd/data-sheet-wd-blue-sn5000-nvme-ssd.pdf
- Crucial「P3 Plus 1TB(CT1000P3PSSD8)」 https://www.crucial.com/ssd/p3-plus/ct1000p3pssd8
- Crucial「T705 2TB(CT2000T705SSD3)」 https://www.crucial.com/ssd/t705/ct2000t705ssd3
- KIOXIA「EXCERIA PLUS G3 SSD」 https://www.kioxia.com/ja-jp/personal/ssd/exceria-plus-g3-nvme-ssd.html
- Solidigm「D7-P5520」 https://www.solidigm.com/products/data-center/d7/p5520.html