まず結論は?
2026年10月時点で、SSDの値上がりはまだ止まっていません。 SSDの中身は「NANDフラッシュ」という、電源を切ってもデータが消えない記憶用のチップです。台湾の調査会社TrendForce(トレンドフォース。メモリ価格の調査で最もよく引用される会社)は、2026年10〜12月期もNANDの契約価格(メーカーと大口顧客が決める卸値)が前の四半期より15〜20%上がると予測しています。とくに企業向けSSDは「値上がり幅がむしろ広がる唯一の品目」とされました。大きな新しい生産能力が動き出すのは2027年末〜2028年と見られており、それまで新品SSDが大きく下がる根拠は見当たりません。
NANDフラッシュとSSDはどういう関係?
SSDは、NANDフラッシュのチップと、それを動かす制御用チップ(コントローラー)などを1枚の基板に載せた部品です。部品代の多くをNANDが占めるため、NANDの卸値が上がると、少し遅れてSSDの店頭価格も上がります。
NANDには、1つの記憶場所に3ビットを記録する「TLC」や、4ビットを記録する「QLC」といった種類があります。QLCは同じチップでより大容量にできるので、大量のデータをためておく用途で使われます。
なぜ値上がりしたのか?
TrendForceが挙げている原因は、主に次の4つです。
- ハードディスク(HDD)の不足。 HDDが品薄になり納期も延びたため、クラウド事業者(インターネット上でサーバーを貸し出す大企業)が、大容量のQLC企業向けSSDに注文を移しました(2025年9月25日)。
- AI向けの保存需要。 AIの学習・利用に使うデータを置く場所が急に必要になりました。TrendForceはこれを「一時的な変動ではなく構造的な不足」と表現しています(2025年11月)。
- メーカーが生産を増やしていない。 2025年前半にメーカーは減産と在庫整理を進めました。2026年のNAND向け設備投資は前年比約5%増にとどまり、その多くは製造工程を新しくするために使われるので、作れる量はあまり増えません。SamsungとSK hynix(ソリダイムを含む)は、NANDへの投資を抑えて、利益の大きいHBMやDRAMを優先するとされています。
- 長期契約で先に押さえられている。 クラウド事業者は値上げを受け入れてでも長期契約を結んでおり、企業向けSSDの新しい供給は大半が事前に契約済みで、市場にほとんど出てこないとされています(2026年9月30日)。
卸値はどれだけ上がった?
TrendForceが公表したNAND契約価格の予測を並べます(前の四半期と比べた上昇率)。
| 時期 | NAND契約価格(予測) | 公表日 |
|---|---|---|
| 2025年10〜12月期 | +5〜10% | 2025年9月25日 |
| 2026年4〜6月期 | +70〜75% | 2026年3月31日 |
| 2026年7〜9月期 | +10〜15% | 2026年7月 |
| 2026年10〜12月期 | +15〜20% | 2026年9月30日 |
7〜9月期に上昇率が縮んだのは、パソコンメーカーが前半に在庫を多く積み、これ以上の値上げを受け入れにくくなったためで、不足が解消したからではないとされています。
いまの相場は?(セミコンチャートのデータ)
ここから下は当サイトが毎日集計している数字です。記事の公開後も自動で更新されます。SSDは容量がまちまちなので、1TBあたりの価格でも比べられるようにしています。
過去からの推移は?(セミコンチャートのデータ)
企業向けとパソコン向けで動きが違うのはなぜ?
2026年10〜12月期について、TrendForceは品目ごとに違う見方をしています。
- 企業向けSSD:2026年の需要(容量ベース)は前年より80%以上増える見込みで、値上がり幅が広がるとされています。
- パソコン向けSSD:パソコンメーカーが在庫を持っていることに加え、普及価格帯のパソコンに載せるSSDの容量を減らしているため、値上がりは限られるとされています。
- ウエハー(切り分ける前のNANDの円盤):値段がすでに過去最高の水準で、下流の小売が受け止めきれないため、上昇は小幅とされています。
つまり、同じNANDでも「誰が、どれだけ急いで欲しいか」によって値上がりの速さが変わります。
買う・売るときに気をつけることは?
- 1TBあたりの価格で比べる。 容量が違う製品は、総額ではなく1TBあたりで比べます。
- 中古は寿命の目安を確認する。 SSDには「TBW」(保証期間内に書き込める総量の目安)があります。中古は、すでに書き込んだ量と使用時間を確認します。
- 企業向けは接続の形を確認する。 U.2などの企業向けSSDは、一般的なパソコンのM.2スロットにはそのまま挿さりません。
- データ消去の記録をもらう。 中古を仕入れるときは、前の持ち主のデータが消されていることを確認します。
FAQ
Q1. 今SSDを買うべき?待つべき? TrendForceの予測では2026年10〜12月期も卸値の上昇が続き、大きな新規の生産能力が動くのは2027年末〜2028年です。「待てば下がる」根拠は今のところありません。必要な容量だけを早めに確保するのが現実的です。
Q2. なぜハードディスク不足でSSDが高くなるの? クラウド事業者が、手に入りにくくなったハードディスクの代わりに大容量のQLC SSDを大量に注文したためです。
Q3. パソコン向けSSDも企業向けと同じくらい上がる? 2026年10〜12月期は、企業向けのほうが上がりやすいと見られています。パソコン向けはメーカー在庫が多く、値上がりは限られるとされています。
Q4. 中古SSDは買っても大丈夫? TBWに対してどれだけ書き込まれたか、使用時間、データ消去の有無を確認できるものを選んでください。相場は上の表で、件数nと一緒に確認できます。
Q5. 「構造的な不足」とはどういう意味? 一時的な需要の波ではなく、作れる量そのものが足りない状態です。新しい生産能力ができるまで解消しない、という意味です。
出典
- TrendForce プレスリリース(4Q25のNAND Flash契約価格見通し、2025年9月25日) https://www.trendforce.com/presscenter/news/20250925-12736.html
- TechNews(TrendForce調査引用)「2026年メモリ業界の設備投資と供給見通し」(2025年11月13日) https://finance.technews.tw/2025/11/13/2026-memory-industry/
- TechNews(TrendForce調査引用)「AIサーバー需要が2Q26のメモリ契約価格上昇を牽引」(2026年3月31日) https://technews.tw/2026/03/31/ai-server-demand-drives-2q26-memory-contract-price-increase-csps-lock-supply-long-term-deals/
- igor'sLAB(TrendForce 3Q26見通し引用)(2026年7月) https://www.igorslab.de/en/dram-and-nand-remain-more-expensive-trendforce-sees-slowing-but-still-rising-memory-prices-q3-2026/
- TechNews(TrendForce 4Q26見通し引用)「AI伺服器新增需求支撐4Q26記憶體合約價漲勢」(2026年9月30日) https://technews.tw/?p=1622115
- DRAMeXchange(ウエハーのスポット価格の公開ページ) https://www.dramexchange.com/